議員である伯父の謎の事故死、巨額の金が絡む汚職事件、隠されたスキャンダル。現在進行形の事件と、父の失踪、謎の女、麻薬と犯罪組織という封印された過去の事件をフラッシュバックの技法で見事にクロスさせた巧みな演出。持続する緊迫感の中、観る者の感情を鷲掴みにし作品世界にぐいぐいと引き込んでいく。『マーシュランド』『静かなる復讐』『ロスト・ボディ』などに続く、スパニッシュ・ミステリーの新たな傑作が誕生した！

現在と過去の事件を紡ぎ、時の中に封印された人間の欲望を炙り出していく見事なストーリーテリングで本作を完成させたナチョ・ルイペレス。初監督作品『アモーレス・ペロス』（2000年）で注目され、後にハリウッドに進出したアレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ、『永遠のこどもたち』（2007年）で長編デビューし、後に『ジュラシック・ワールド／炎の王国』を監督したスペイン人監督、J・A・バヨナを彷彿とさせる、世界進出が期待される新進気鋭の監督である。

アルゼンチンで絶大な人気を誇り、『10億分の1の男』（2001年）でスペインのアカデミー賞（ゴヤ賞）を受賞した名優、レオナルド・スバラーリャが、事件のカギを握る失踪した父親パウを演じる。パウの失踪の謎を解くことで、全ての封印された過去が暴かれていくという重要な役どころを、圧倒的な存在感で演じる。ほか、父の失踪の謎を探り、隠された過去を紐解いていくジョルディに、多くのTV・映画で活躍するミシェル・ノハー、事故死した議員の息子、ディエゴにペドロ・アルモドバル監督作品『私が、生きる肌』（2012年）でゴヤ賞新人男優賞を受賞したジャン・コルネットが、それぞれ魅力的に演じている。