本作の舞台は内戦(紛争と見る向きもある。)を経て今もなお、国内情勢が不安定なグルジア。そこの援助組織で働く若い女性ふたりが本作の主演である。ふたりがコーカサスの山をハイキングしている途中、一人が誘拐されるという設定なのだが、誘拐された友人を救おうと駆け込んだ先が、駐留を続ける国連軍。監禁映画にしては、背景がとても政治的で興味深い。単純なエンタメジャンルに、何故この政治的背景を持ってきたのか?理由は、犯人が登場してから明確になるがネタバレなので・・・。いずれにせよ戦争が生み出す人間の狂気を描いた、作り手のメッセージが痛切な映画でもある。 本作の見所は大スケールのロケが、密室の恐怖を際立たせている所である。内容も監禁スリラーに戦争ドラマの重厚さとエロティック・サスペンスのエロティシズムが加わった人間のあらゆる欲望を刺激する監禁密室サスペンスとなっており、とても刺激的だ。実社会でも度々、監禁事件は問題になっているが、支配と暴力の快楽、性の快楽、男が一歩道を踏み外せば堕ちかねない魔の領域、本作を観る者は理不尽な恐怖を感じながらも、禁断の快楽に酔っているのかもしれない?!また『SAW』シリーズを筆頭とする監禁密室サスペンスは理不尽な恐怖からの脱出という極上のサスペンス性で幅広い映画ファンを獲得してきたのだが、本作はいわゆる映画通もうならせる作品でもある。 |