“勝ち組”と“負け組”に分断された移民同士の抗争、傷ついた愛と誇りの物語
敗戦情報がプロパガンダめいたデマではないかという疑心暗鬼が広まるなか、日本の戦争勝利を断固として唱え続ける"勝ち組"の勢力は、それを信じようとせず、少数派の"負け組"の人々を"汚れた心を持つ国賊"と断罪し、ブラジル各地の日系人社会で襲撃事件を引き起こしていった。
ごく平凡な男タカハシと妻ミユキがたどる痛切な愛の運命を軸に、その背景となった歴史の真実をあぶり出す。遠い祖国への愛が狂信的な言動へと歪められていく戦争の不条理、さらには抑圧、不寛容、差別といった現代に通じる問題をはらんだ壮絶な物語は、全編を貫くサスペンスと相まって観る者をスクリーンに釘づけにする。はたして過酷な極限状況に陥ったとき、人は何を信じ、何を心のよりどころにすべきなのか。登場人物それぞれの葛藤をエモーショナルに探求した本作は、そんな痛切にして複雑な問いを投げかけてくる。
日本語セリフが大半を占めるブラジル映画
その画期的な企画に集結した名優たち
主役タカハシには巨匠クリント・イーストウッド監督作『硫黄島からの手紙』での好演が忘れがたい伊原剛志。本作でプンタデルエステ国際映画祭で日本人初の主演男優賞に輝いた。タカハシの妻ミユキにはアミール・ナデリ監督作品『CUT』などで新境地に挑み続ける常盤貴子。幾多の名作に出演し、監督としても活躍する奥田瑛二が粛清を扇動する退役軍人ワタナベ役で圧倒的存在感を発揮。また、『おくりびと』の余貴美子、『ロストクライム--閃光--』の菅田俊が否応なく粛清の渦中に巻き込まれる夫婦を力強く演じている。監督は『善き人』のヴィセンテ・アモリン。欧米での長い滞在経験を持つ気鋭監督の"外国人の眼差し"がこの物語にフラットな視点を与えている。そして『踊る大捜査線』シリーズなどで名高い作曲家、松本晃彦が音楽を担当し、今、最も注目される美貌のヴァイオリニスト、宮本笑里が胸に迫る演奏を披露。ブラジルと日本の才能たちが親密なコラボレーションを実現させた画期的な映画がここに誕生した。
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